2020年キースイッチ関連の回顧
この記事は キーボード #1 Advent Calendar 2020 の15日目の記事です。
14日目の記事は t-miyajima さんの 自己満のための! やさしい鍵盤命名入門《自作キーボード》 でした。
ここ数ヶ月ずっとPC版の Fall Guys をしています。ちょうど今日からシーズン3ですね!
Steamで20%オフのセール中なので、ぜひこの機会にどうぞ~
というわけでゲームやお仕事に時間を吸われるなどしてここ最近自キ活できてないですが、今回は2020年個人的に印象に残ったものをメーカーなどから振り返ってみます。
Durock / JWKとその近縁
2020年のキースイッチを語る上で外せないのは、2019年と同様に Durock / JWK でしょう。
昨年の偽Tealios事件後にAlpacaが出た時は割と色々言われていた気がしますが、年始のC³ Equalz Tangerineが出た辺りからめっきり聞かなくなりましたね。
みんな結局物が良ければそれでいいやという感じなんだなと思いました (小並感)
継続的に改良や金型の更新、カスタムオーダーをよくやっててその辺りは好感が持てます。
最近になって江小(黄/紅/白)という安めのシリーズがEverglideと同じ販売元から発売したので、今後の展開が楽しみですね。
少し気になっているのが、Durock / JWKと同じ金型で生産されているように見えるのにそれらのメーカー製じゃないよ、と言っている企業やブランドがあるということです。
忆光外设はEverglideシリーズについて「JWK製ですか?」という質問に「いいえ」と答えているし、SP-Starも自社工場で生産しているとのこと。でもSP-Starの新作はV2ハウジングそのまま…
この辺り機会があれば聞いたり調べたりしておきたいです。
TTC
元々マイクロスイッチで有名ですしNovelKeysでも TTC Gold V2 の取り扱いがありましたが、今年春辺りに出た TTC Gold Pink からキースイッチメーカーとしての知名度が特に上がったように思います。
Gold Pink は押下圧の軽さ (底打ち45g) とやたら長いスプリングが特徴のリニアスイッチで、TTC製スイッチがあれだけ各所で広く取り扱われたのは初めてだったのではないでしょうか。
その後追随して似たような長さのスプリングの入ったスイッチが出たり、スプリング単体でも出たりと、その後のトレンドにある程度影響を与えていたように思います。
今年発売された Razer BlackWidow V3 でも引き続き採用されてますし、今後もたくさん面白いスイッチを作っていってほしいですね。
Gateron
Ink のKangarooや色違い、構造を若干変更した CAP などはありましたが、今年はあまり目立たなかった印象があります。
元日にアナウンスのあったZealの新スイッチがタクタイルリーフを搭載するということでかなり楽しみにしてたんですが、結局この記事を書いている時点で出てないので来年に期待ですね。
Kailh
ここもどれだけあったっけ…と思ったけど、思い返してみたらけっこう出してますね。 Choc V2、KT Silent、BOX Silent、NK_ Blueberry、Polia…
PoliaでようやくHaloとほぼ同じステムが様々なショップに並ぶようになったということで、少し高くなりますが Drop に頼らずとも Holy Panda を作ることができるようになりました。
Holy Panda Clones
下半期になってから突然 Holy Panda クローンが多くなりました。
Everglide の Dark Jade や Feker (Tecsee製らしい) の Holy Panda like、BSUN の Holy Panda POM Edition などなど…
出てきた時期は近いものの、それぞれハウジングはもちろんステムの金型も別 (かつオリジナルでもない) なので、何かのきっかけで同時多発的に作られ始めたのでしょうか…?
あと後ろ2つの再現度がけっこう高いんですよね。Poliaが出たばっかりではあるけど、ほとんどの人はFekerでも十分満足するんじゃないかなと思います。
おわりに
というわけでとりとめのない話ではありましたが、今年の振り返りでした。
年越し前には大掃除の一環として手持ちのスイッチの棚卸しをしたいなと思ってます。正直今のところ何千個持ってるかちゃんと把握してないんですよね…
十中八九不要分が出るので、 ちゃんと棚卸しをしたらSMKiJのDiscordに「WTS キースイッチ 以下のスプレッドシート参照」みたいなことをやるかも。
この記事は Infinity Ergodox (Zealio V1 67g, SA Carbon) で書きました。
次回 12/16はtakaiさんのアルミ切削加工キーボード設計のお話です。
実践: キースイッチのカスタマイズ
この記事は キーボード #1 Advent Calendar 2019 の18日目の記事です。
昨日の記事は、なるさんの 自作キーボードキット販売までに利用したもの uzu42編 でした。
さて今回は昨年のAdvent Calendarの記事と同じタイトルの頭に「実践」と付けて、 天下一キーボードわいわい会 Vol.3 に向けて作ったカスタムキースイッチの部品選定の過程をご紹介します。
作った動機
今回作ろうとしたのは、いわゆるHoly Panda (以下HP) 系の柔らかめなタクタイル感を持つスイッチです。
Holy Pandaも割と好きなんですが、もうちょい滑らかでタクタイル感が柔らかめのものが欲しいなー、ということでいろいろ試してみました。
既存のでもタクタイル感が柔らかめなスイッチといえばT1、Zealio V2などありますが、
- T1… 割と良いが、そのままだとタクタイル感が強め
- Zealio V2… タクタイル感が長すぎ&強すぎてだめ、あと戻りのタクタイル感が強すぎる
という感想だったので、これはもうフランケンスイッチするしかないなと。
用語の参考
…になるかもしれないし、ならないかもしれない
試した素材
今回は元々ある程度アタリをつけて作ったのでそこまで多くはないですが、大体これらのパーツをとっかえひっかえして試してみました。
- ステム
- T1
- Halo Clear/True
- ハウジング
- Zealio V2
- Gateron Ink Blue
- スプリング
- SPRiT Designs
- Catweewee
- Novelkeys
- Thic Thock
- フィルム
- KeBo
- TX
これまで試したもの
T1魔改造(?)
魔改造というほどではないんですが、スプリングを交換したり、フィルムを挟んだり、接点にlubeを載せたりしたらなんかしっとりとした良い感じになった気がした…んですが、元がT1なのでやっぱりちょっとタクタイル感強いんですよね。
今年春の天キーvol.2に同じくKBD67に挿して持っていったんですが、ここだけの話半分くらいはR1を使っていたのでチャタりまくりでした。 一応選別してチャタってなさそうなのを使ったのにどうして…
Zealio V2 + Haloステム
Zealio V2があれだけタクタイル感強いのって、リーフの形もあるんですけど、ステムのレッグの形もだいぶ影響してるんですよね。 いやこれは形というか出っ張り具合というか…
似た形状ながら出っ張り具合が控えめなHaloスイッチのステムに交換することで、タクタイル感控えめ (当初比) になってかなり使いやすくなります。
部品選定
1. ハウジング
まずハウジング…というか正確にはリーフを選びます。 そもそもなんでHPとかT1、Zealio V2があんなタクタイル感になるかというと、もちろんステムのレッグの形もあるんですがリーフの形状も要因としてかなり大きいです。 リーフのステムと触れる部分と、ステムのレッグが両方丸みを帯びたカーブになっているからこそ、独特なタクタイル感になります。
今回の候補はZealio V2とGateron Ink Blueの2つ。 実はGateron Ink Blueのリーフって他のInkシリーズと違う形をしているんですよね。
青Ink、やはりleafが他のと違ってた (1枚目が青、2枚目が黒) pic.twitter.com/SKwJdJfZtD
— きせのん (@Xe_ry) 2019年7月27日
これがかなり良くて、Zealio V2と似たような柔らかめのタクタイル感ながら強さは控えめという、なかなか自分好みな感じになります。 ということでハウジングはこれにしました。
ちなみに他に丸みを帯びたリーフといえばBSUN BrownやGSUS、YOK * Pandaなどがありますが、これらは表面の滑らかさが微妙に気になったので使っていません。 (というかそれ以前の問題として、BSUN系ハウジングはサイズが大きくてKBD67のプレートに嵌まらない)
2. ステム
ステムはHaloとT1の2択に。 T1のステムは、スイッチ自体が「HPと95%同じ」といって売り出されていた程度にはにレッグの形がHaloステムと似ているんですが、
- センターポスト (真ん中の丸い棒) の長さ
- 素材
の違いが結構効いてきます。
センターポストの長さはステムの安定性の他、一定の長さを超えてくるとストロークの長さに影響します。
というのもある程度以上長いと下ハウジングの底とぶつかってしまうんですよね。
HPがうるさい良い音がするのもこのせいです。
ちなみに他のKailh製スイッチのステム、例えばKailh Pro Burgundyなんかもセンターポストが長めです。
素材的にはT1はPOM製なので、かなり滑らかです。
滑らかさ重視なので当初はT1使おうかなーと思っていたんですが、実際組んで試してみるとストロークの最後の方でタクタイル感が終わった後のリニアなところがあるのが気になってしまい、Haloステムを使うことにしました。
3. スプリング
正直ここが一番悩みました。
というのも重さはもちろん、長さでも全然打鍵感が違ってくるんです。
一般的に、スプリングが何で区別されて売られているかというと底打ち時の重さです。
それ以外は品質の高さを謳う文言こそあれ、スプリングの長さについての言及は基本的にありません。
ただ、実際問題としてスイッチに収まる際には10mm程度に圧縮されるスプリングの、元の長さが長いのと短いのでは打ち始めや作動圧 (スイッチが入るときの重さ) が全然違ってきます。
mrpetrov氏が各スプリングの作動圧を測った結果をTop ClackのDiscordに載せている 1 のですが、底打ち時の重さがほとんど同じでも作動圧が違う、またその逆も多いということが分かるかと思います。
しばらく試してみた感じとしては、タクタイル系の場合、スプリングの重さや長さによって下記のような傾向があるように感じました。
- 重さ… 全体的なタクタイル感の強さ (軽いほど強く、重いほど弱くなる)
- 長さ… タクタイルの山を越えてからの押下圧の落ちる高さ (長いほどスコッと下まで一気に落ちやすい)
ブランドやシリーズごとに長さを並べると大体こんな感じ。短いのから。
- SPRiT Supreme Series
- Novvelkeys Springs
- TX Springs
- Catweewee Springs
- THIC THOCK DL Series
- SPRiT Supreme Series (slow curve)
SPRiTのスプリング、この中では一番入手性が高い割に長さが両極端で、クセがだいぶ強いんですよね。
とにかくクセのないベーシックな特性のものが欲しい場合はTXがおすすめ。
個人的には長めかつ重めのものがしっくり来たので、手持ちの中では一番合っていたSPRiT 68S slowにすることにしました。
4. スイッチフィルム
スイッチの遊び由来っぽいカチャカチャ音が抑制されるので、付けるのは決めていたんですが、TXのとKeBoのとで比べてみるとKeBoのものの方がなんとなく打鍵感が柔らかめになるように感じたのでKeBoのを使うことにしました。
5. lube
実はこの辺りで天キー参加のために出発するまでほとんど時間がなかったので、スプリングはKrytox VPF1514でTab lube、ステムはKrytox GPL203 g00で軽めに潤滑しました。
最終構成
最終的にできたのが上の画像左側のもので、構成は下記の通り。
- ハウジング: Gateron Ink Blue
- ステム: Halo Clear
- スプリング: SPRiT 68S slow
- フィルム: KeBo
- lube: Krytox GPL 203 g00 (ハウジング&ステム)、Krytox VPF 1514 (スプリング)
安直に呼ぶと「Holy Blue Ink」…ということでふざけてこんなツイートもしてたんですが、色付きInkが出た直後 (8月初め) には「Diamond Starstone」と呼ばれていた2ようなので、天キーではこの名前を入れました。
所感
キーボードはKBD67、キーキャップはePBT Extended 2048でちゃんと座って打った時の自己評価はこんな感じでした。
- 滑らかさ…◎
- タクタイル感…○
- 強さ…○
- 長さ…◎
- 柔らかさ…◎
- 戻りのタクタイル感の強さ…○
- 音…◎
- 総合…80/100点
自分で言うのもなんですが、けっこう良い感じに仕上がったかなとは思います。
ただ、もう少しタクタイル感を弱くしたいなと思っていて、それには下記の点を改善する必要がありそうです。
- 欲しい特性のスプリングが無かった
- slow curvedな (長めの) スプリングは68gまでしか取り扱いが無い。せめて70g台までは欲しかった…
(もしご存知のものがあれば教えてください)
- slow curvedな (長めの) スプリングは68gまでしか取り扱いが無い。せめて70g台までは欲しかった…
- 時間的制約によりlubeが適当
- とりあえずタクタイルだから、と手持ちで一番薄いグリスを使ったが、もうちょい厚めのものを使ってもよかったかも
あとがき
というわけで、スイッチだけのビルドログというか、なんかそんな感じのものでした。 少しでも参考になるところがあれば幸いです。
用語の参考のところにも一部貼ってますが、最近はScrapboxにいろいろまとめてます。
もしよろしければこちらもどうぞ。
この記事はここで取り上げたKBD67からスイッチとキャップを引き抜いて制作した Caravelle BLEで書きました。
Arctos switch を触ってみた
ちょっと試してみたので記録代わりに。
元々アドカレ前には上げたいなぁと思いつつ寝かせてたやつですが、腐らない内に上げときます。
Arctos #とは
KeBoが出したタクタイルなMX互換キースイッチです。
https://kebo.la/products/arctos-switches
キースイッチのカスタマイズ
この記事は 自作キーボード Advent Calendar 2018 #1 の15日目の記事です。
adventar.org
14日目は鍛冶屋弁当屋Pさんのキーボード作りたい!(小太刀編)でした。
本日は、ここ最近広がりつつあるように感じるキースイッチのカスタマイズについて紹介します。
続きを読むVarmilo(アミロ)の静電容量無接点キーボードを触ってみた
お久しぶりです、きせのんです。
最近ブログには何も書いてませんが、すっかり自作キーボード沼に嵌っています…。
先日もキーボード好きが集まるイベントに参加してきました。
今回は、そのイベントの抽選会で入手した「Varmilo MA109C Electrostatic Capacitive Keyboard」についてご紹介します。
続きを読むSteelseries 7G(KR配列)を買った
あけましておめでとうございます(今更)
さて新年早々特に目的もなく日本橋に行ったのだけど、とりあえず駅から一番近かったワンズに行ったらSteelseries 7Gの韓国配列版がどーんと置いてありまして。
SteelSeries 7G (Japan) キーボード 64048
- 出版社/メーカー: SteelSeries
- メディア: Personal Computers
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続きを読むSteelseries 7G(Cherry MX Black)のKR配列買いました pic.twitter.com/fJrShXuA5i
— きせのん (@Xe_ry) 2017年1月3日